設立のきっかけ(代表挨拶)

 これまで神戸市職員として、福祉(生活保護)、企業誘致、子育て支援(こどもの貧困)など、様々な分野の業務を担当してきましたが、その中で、特に関心を持ったのが子育て支援の分野でした。

 

 職務を通じてひとり親家庭や生活保護を受給されている方々とお会いする中で、何層にも複雑に絡み合い解決できない問題の難しさ、と同時に行政の限界も感じていました。

 

 そして自身の原体験も重なる中、未来を担う子どもたちの課題解決のために、職務で得た知識や経験、人脈を、職務外でも活かしたいとの思いから、2017年に神戸市職員有志で団体を立ち上げ、活動を開始しました。

 

 当団体のビジョンは「すべての子どもが、等しく教育の機会を」です。親の価値観や家庭環境に関わらず、すべての子ども達の能力が最大限に発揮できる、公正で、より一層大きな自由のある社会を実現したいと願って活動しています。

 

 2021年、神戸市立中学校に通う中学2年生及びその保護者に全数調査を行った結果、7人に1人が相対的貧困の状態にあることがわかりました。多くの中学生が経済的制約から他の世帯と比べ学校外の学習機会が十分に得られない環境にある可能性があります。

 

 さらに不登校も過去最高を更新、お子さんの発達の特性に悩んでおられる親御さんもたくさんいらっしゃいます。

 

 小学生を中心に、こどもの居場所が神戸に沢山できました。次は、困難を抱える中学生を対象に、質の高い学習支援が必要です。単なる居場所ではなく、集中できる環境で、個々の事情に応じて講師をベストマッチングするきめ細やかな質の高い学習支援が、切れ目のない子育て支援には必要です。

 

 それは単に偏差値の高い高校に進学することを目的にした学習塾でもありません。ボランティアなのに全力で応援してくれる不思議な存在の優秀な大学生のお兄さんお姉さんがロールモデルとなって、勉強する楽しさや意味を感じ、高校以降も努力し続ける力を身に着ける、そんな夢の居場所です。

 

 そうした質の高い学習支援が各地域に誕生していく中で、高校中退を抑制し、大学進学につながるなど、貧困の連鎖や負の社会的相続を防止できるという効果(社会的損失の減少)に加え、それ以上に、若くして苦労した彼らこそが、実は社会的意義のある新たな価値を創造し、社会に大きな変化をもたらす存在であることを証明してほしいと期待しています。

 

2024年1月17日 代表理事 佐々木宏昌

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商大ビジネスレビュー第8巻第1号本文04佐々木宏昌
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