設立のきっかけ(代表挨拶)

これまで神戸市職員として、税(固定資産), 福祉(生活保護)、子育て支援(保育所整備)、企業誘致など様々な分野の業務を担当してきました。

 

その中で特に関心が高く、心を惹きつけられたのが福祉・子育て(貧困の連鎖)の問題でした。

 職務を通じて、これまでシングルマザーの家庭や生活保護を受けている方たちに出会い、様々な問題を目の当たりにしてきました。

 

自分自身も塾に通えず苦労したということもありますが、職務を通じて得た知識や経験を活かして、今後は未来を担う子どもたちのため、職務外でも、地域の課題解決に向け積極的に取り組んでいきたいと考えています。

 

厚生労働省などによると、生活保護世帯の子どもの 2015 年度の大学進学率は19.0%であり、全世帯平均 51.8%より約 30%ポイントも低く、専門学校などを含めた進学率も33.1%と、全世帯平均の半分以下に 留まっています。

 

一方、高校卒業後の就職率は44.3%と全世帯平均の2.5倍、高校などへの進学者は93.3%と約5%ポイント低く、中退率も高い状況となっています。

 

子どもの貧困が経済に与える影響を試算した社会的損失推計レポート(日本財団貧困対策チーム) が話題になりましたが、むしろ私が課題と感じるのは、部活動が終了した学生が受験体制になる大切な時期に、家庭の事情等で教育環境が異なるという現状です

 

神戸市でも無料学習支援(国庫補助制度)が行われていますが、実際にはその何倍もの子供たちに支援が行き届いていないという課題があります。

 

また、塾に通っていない理由は、単に経済的事情だけではなく、様々な事情があり、知らず知らずのうちに子どもたちの将来の選択肢が狭められている場合があります。

 

高校受験を控えた中学3年生の一番大変な時期に、塾に通えない子どもに地域の大人達が寄り添い、励まし、伴走することにより、「お金ではない大切なもの」を受験生・講師ともに感じ取ってもらうことが本プロジェクトの最大の目標です。

 

この体験は、高校合格以上に彼らの今後の人生により良い影響を与え、また、そうした一人ひとりへの寄り添いが社会をより良い方向へ変化させると確信しています。

 

具体的には、学習することの意義や、地域の大人達の職業観を伝えることで、子供たちの学習意欲を高め、将来の展望を思い描けるようになるとともに、「やり抜く力」「他人への優しさ」などを身につけることを期待しています。

 

その結果、高校中退を抑制し、大学進学に繋がることなど、貧困の連鎖や負の社会的相続を防止できるという効果(社会的損失の減少)、それ以上に、若くして苦労した彼らこそが、実は社会的意義のある新たな価値を創造し、社会に大きな変化をもたらす可能性が高いことを証明してほしいと期待しています。

 

代表 佐々木 宏昌

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商大ビジネスレビュー第8巻第1号本文04佐々木宏昌
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